PMBOK 第7版の内容とそのビジネス上の意義について

2024年01月15日- By Hiromasa Chigusa
 

はじめに

みなさんこんにちは。

先日、プロジェクトマネジメント技法の一つである『PMBOK®ガイド』第6版についての記事を書きましたが、今回はその後継である『PMBOK®ガイド』第7版についてとりあげてみたいと思います。

「PMBOKとは何か?」については先の記事に記載しているので割愛しますが、1987年に最初の版が出て依頼、時代の流れに沿って改訂が重ねられ、現在は2021年にリリースされた「第7版」が最新版となっています。

PMBOK®ガイド 第7

2021年7月にリリースされた第7版ですが、第6版の内容から大きく変更が入っています。

過去版はプロセスベースの標準を志向してきたものですが、昨今の状況に鑑みて、PMIが「価値実現」に重きを置いた形に仕上げられています。

プロジェクトマネジメントは以前より急速に進化しており、過去の版のプロセスベース指向は、価値実現の全貌を示すための方法として維持することができない。そのため、この版では、効果的なプロジェクトマネジメントを支援し、成果物ではなく意図した成果をより重視するために、原理・原則ベースの標準に移行している。

(中略)

プロジェクトはアウトプットを生成するだけではなく、より重要なこととして、それらのアウトプットによって組織とそのステークホルダーに最終的に価値を実現する成果を生み出せるという点を強調している。』(参考情報[1])

では、早速その内容を見ていきましょう。

「原理・原則」と「パフォーマンス領域」

『PMBOK®ガイド』第7版は、第6版と同じく、「プロジェクトマネジメント標準」および「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」の2つについて記載されています。

本記事では、上図のうち特に触れられることの多い「プロジェクトマネジメントの原理・原則」と、「プロジェクト・パフォーマンス領域」について取り上げます。

『PMBOK®ガイド』第7版の構成(参考情報[2]より筆者が再作成)

『PMBOK®ガイド』第7版では、プロジェクトマネージャーが押さえておくべき「原理・原則」がまず述べられます。

その後「知識体系エリア」について解説されていますが、知識体系エリアの利用は、「原理・原則」を踏まえた上であることが前提となっています。

『プロジェクト・パフォーマンス領域における作業は、プロジェクトマネジメントの原理・原則に基づいて行われる。(中略)原理・原則とは、基本的な基準、真実、または価値観である。(後略)』(参考情報[3]

「プロジェクト・マネジメントの原理・原則」が前提となって、具体的な作業である「パフォーマンス領域」が実施されるべきであることがわかります。

ではまずは「原理・原則」について見ていきましょう。

プロジェクトマネジメントの原理・原則

「プロジェクトマネジメントの原理・原則」には12個の項目があります。個々の項目と概要を大まかにですが表にしましたので、概観してみましょう。

図1. プロジェクトマネジメントの原理・原則

非常に幅広く、どんな状況にも対応できるような項目が網羅されているような印象を受けるのではないでしょうか。ここに書かれた特性は、プロジェクト・マネージャーだけが備えるものではありません。プロジェクトに関わる人々すべてに対して振る舞いの指針を提供しているものです。

『プロジェクトマネジメントの原理・原則は規範ではない。プロジェクトに関わる人々の振る舞いへの指針を提供するものである。この原理・原則は広く普及しているため、個々人や組織が原理・原則への整合を維持できる方法はたくさんある。』(参考情報[4]

また、必ずしもこれら全てを遵守することが求められるというわけでもないことには注意が必要です。

『このプロジェクトマネジメントの原理・原則は指針を提供するにとどまり、適用の度合いや方法は、組織やプロジェクト、成果物、プロジェクト・チーム、ステークホルダー、その他の要素の状況に影響を受ける。』(参考情報[5]

「原理・原則」はプロジェクトに関与する人の行動指針となります。

それを踏まえた上で、具体的な行動を示す領域が、次に述べる「パフォーマンス領域」となります。

プロジェクト・パフォーマンス領域

プロジェクト・パフォーマンス領域とは、『プロジェクトの成果を効果的に提供するために不可欠な、関連する活動』(参考情報[6]です。

プロジェクト・パフォーマンス領域には8個の項目があります。それらは独立したものではなく、相互に関連し、連動し、同時並行的に実行されていくものとされています。特定の重み付けや順序はありません。

ではその内容を見ていきましょう。個々の項目と概要は、概ね次のようになります。

図2. プロジェクト・パフォーマンス領域

上の表のうち、具体的にどういう活動を行うかは、組織やプロジェクト、チームやステークホルダーなど、個々の状況によって決まります。

実際には、これらのアプローチやプロセスは、先に述べた「原理・原則」に則って、組織においてテーラリング(=特定の環境や眼前のタスクに適合するように合わせること)されることになります。

おわりに

『PMBOK®ガイド』第7版では、成果を達成することに重点を置いています。また、第6版までの「プロセスベース」の標準から、「指針を提供する原則に基づく」標準へ移行したことが大きな特徴でもあります。

プロジェクト・チームは、12個の「原理・原則」をベースに、8個の「パフォーマンス領域」の活動群を駆使して、価値実現のための取り組みを行うことになります。『PMBOK®ガイド』第7版は、価値実現の重視がビジネスの目標を進展させるという考えの下で、「全体観」を強調しているのです。

参考情報
[1] PMBOK®ガイド 第7版 p.9
[2] PMBOK®ガイド 第7版 p.12
[3] PMBOK®ガイド 第7版 p.97
[4] PMBOK®ガイド 第7版 p.46
[5] PMBOK®ガイド 第7版 p.47
[6] PMBOK®ガイド 第7版 p.100

Rackspaceについて

Rackspace Technologyの日本国内サービスは、アイレット株式会社Global Solutions事業部より提供させていただきます。

Amazon AWSとMicrosoft Azureの導入検討のコンサルティング(勉強会)から構築、運用・保守までワンストップのクラウド支援サービスです。

お客様のご要望に柔軟に対応いたしますので、まずはお気軽にご相談ください。