1つのSaaSプラットフォームで実現する、シングルテナントとマルチテナントモデルのSaaS展開

By Rackspace JP – 2021年5月14日

Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア, SaaS)といえば、皆さんが考えるほとんどのサービスはおそらく 「マルチテナント」 でしょう。その通り、有名なSaaSアプリの多く、特に中小企業や中規模市場の顧客向けのアプリは、マルチテナントです。

マルチテナントSaaSにより、多くのお客様が求めるコスト削減と使いやすさを実現することができます。

しかし、マルチテナントSaaSが、全ての顧客固有のニーズを常に満たせるわけではありません。お客様の中には、シングルテナントでのみ実現できる、コントロールやセキュリティ、カスタマイズを必要とする方も出てくるでしょう。

そのため、多くのソフトウェアベンダーが多面的なアプローチを取っています。マルチテナント、シングルテナント両方のアーキテクチャに、ソフトウェアを展開しています。 このようにして、顧客はSaaSの利点である、使った分だけ支払うというメリットを享受しながら、コスト削減と必要なコントロールのレベルを選択することができます。 

マルチテナントおよびシングルテナントのSaaSアーキテクチャについて

 

マルチテナント

マルチテナントのアーキテクチャでは、多くの顧客はSaaSアプリケーション用の1つのインスタンスを共有しています。各顧客のデータは分離されて保護されていますが、インフラストラクチャ自体は全ての顧客で共有されている状態です。

顧客にとって、マルチテナントSaaSはコスト削減と使いやすさを実現する方法です。しかし、お客様はアップデート、バックアップ、リカバリなどをほとんどコントロールできず、カスタマイズできる範囲も限られます。また、アクセスポイントが増えることにより、マルチテナントSaaSがセキュリティの脆弱性を引き起こす可能性もあります。

シングルテナント

シングルテナントのアーキテクチャでは、各顧客はSaaSアプリケーション用の専有インスタンスを利用できます。ソフトウェアとデータは、お客様専用のインフラストラクチャ上で実行され、さらにバックエンドやデータベースリソースの共有もありません。

シングルテナントSaaSにより、セキュリティが向上し、サービスを自由にカスタマイズできます。しかし、より高いコストと多くの管理責任が伴うことになります。

マルチテナントおよびシングルテナントのSaaS導入例

たとえば、独立系ソフトウェアベンダー (ISV) のケースを考えます。ソフトウェアの製造と販売を行っていますが、ユーザーがさまざまなバージョンのソフトウェアを実行できる(サポートしなければならない)永久ライセンスモデルによって、社内のリソースを浪費し続けています。そのため、ソフトウェアをクラウドに移行し、SaaS化しようとしています。これにより、すべてのユーザーに同じバージョンの製品を利用させることができます。

SaaSソリューションを構築し、マルチテナントとシングルテナントの両方のアーキテクチャに展開し、サブスクリプションモデルを通じて利用できるようにします。お客様から見る違いは、前述のマルチテナント/シングルテナント固有の長所と短所を除いて、アップデート、設定、およびトレーニングに関してでしょう。例えば以下のようなものです。

アップデート

  • マルチテナント: アップデートは四半期ごとにプッシュされ、顧客側の手間はありません。しかし、顧客はいつアップデートをするか、あるいは入手するか、について選択の余地がありません。
  • シングルテナント: アップデートは6カ月ごとに提供されるが、顧客はアップデートを12カ月延期できます。これにより、たとえば大事なイベントとの競合を避けるために、都合のよい時間に更新をスケジュールする柔軟性が得られます。

構成

  • マルチテナント: ソリューションは事前に構成されていますが、顧客はビジネスニーズに合わせて、微細な調整であれば行うことができます。
  • シングルテナント: ソリューションには、カスタマイズ可能なモジュールと事前設定されたテンプレートが付属してきます。顧客は、コードを修正することはできませんが、幅広い再構成は可能です。

トレーニング

  • マルチテナント: 構成がすべての顧客で同じであるため、エンドユーザは共通で提供されるトレーニングやサポートリソースを活用できます。
  • シングルテナント: 顧客は、独自のソリューションを使用しているため、独自のトレーニングおよびサポートリソースを提供する必要があります。

このようなモデルを使うことで、すべてのお客様が、ベースとなる同じバージョンのソフトウェアを使用し、それぞれのお客様に最適なデプロイメントを行うことができます。これにより、ビジネスの運用効率が向上し、サービスがより効果的になり、最終的にはカスタマーエクスペリエンス向上につながります。

顧客のサクセスストーリー

エンタープライズITサービス管理 (ITSM) ソフトウェアプロバイダーであるAlemba社は、従来のオンプレミスソリューションを、中小企業からエンタープライズ、教育、医療、金融サービス、政府に至るまで、世界中のすべての顧客をサポートできる完全なSaaSプラットフォームに移行しました。

Alemba社はRackspaceと協力して、小規模企業向けのITSMテンプレートを提供できるインフラを開発しました(マルチテナントSaaS上に展開)。一方で、大企業向けのよりカスタマイズ可能なサービスを開発する柔軟性も維持しています(シングルテナントSaaS上に展開)。

「あらゆる規模のお客様に対して、はっきりと定義された普遍的なソリューションを提供できるようになりました。また、お客様の要件を、当社のビジネスにとってスケーラブルで持続可能な方法で満たすことができます。」と、Alemba社CEO Simon Nugent氏は説明します。

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本記事の翻訳編集は、アイレット株式会社Rackspace 事業部ソリューションアーキテクトの猪狩章が担当いたしました。