クラウド選択を間違えないための5つのポイント

2021年8月12日 – By Rackspace JP

社内のクラウド技術の能力は高まっています。では、なぜクラウド基盤選択の意思決定に対する確信が低下しているのでしょうか。その理由を明確化し、ITに関する継続的な選択を迅速に行い、従来どおりのビジネスを変革する方法をご説明します。

クラウドサービスを選ぶのはなかなか難しい

クラウドサービスを正しく選択することは非常に重要です。しかし、それは難しくもあります。

昨年、業界を代表する二人のアナリストが調査したところ、CIO/CTO (今後2年間に自社アプリをどこに置くかを知っている人物)の「プラットフォーム選択の確信度」は4年前の半分以下になっていると言います。パブリック、プライベート、 VM, Kubernetes, IaaS, PaaS, SaaSなど、4年前に比べて実現可能なプラットフォーム構成の選択肢が多数増えているため、一見すると矛盾しているように思えます。

弊社はソリューションリーダーとしてさまざまなクラウドのお客様と協業してきました。その知見の中で、プラットフォームの選択肢が増減しただけでなく、社内のクラウド技術の経験や知識、能力がこの1~2年で大幅に向上したことがよくわかります。その結果、お客様とのパートナーシップは、よりインタラクティブで複雑、かつ洗練されたものになりました。

選択肢とノウハウが多いほど、 (クラウド) プラットフォーム選択の確信が低下するのはなぜか

新しいレストランでのランチを考えてみてください。メニューには聞いたことのない珍しいものが載っており、選ぶ時間は限られています。料理はどれもおいしそうに聞こえますが、知らない材料が多いとき、それらは何なのか、どんな味なのか、どういう組み合わせがあるのかなど、聞きたいことが山程で、誰でもジレンマに陥ることがあります。

メニューに項目を追加すると、速く選べるようになるとは限りません。多くのお客様に、好きな料理について話してもらうことも、助けになる場合とそうでないことがあるでしょう。

いくつか外すことのできない基準を設定し、迅速かつ適切に選択できるようにすることがなにより重要です。インスピレーションを得るためにメニューを読み、結論が出ると期待するだけでは、目立たない食材やその産地などに目が行き、迷ってしまうことがあるでしょう。このように食べたいものや必要なものを注文するのは難しいものです。あるいは、前回注文したものと似たものを注文すればいいのかもしれません。それは 「問題ない」かもしれませんが、お金を使う価値がないと感じてしまうこともあります。これはあなたの組織でプラットフォームサービスを選ぶときと似ていませんでしょうか。 

 調査と経験によると、多くの組織では、クラウドプラットフォーム間の選択と似ていると感じていることがわかります。テクノロジーリーダーとして、私たちは技術を深く知ることなく新しい技術やサービスのメリットを探さなければなりません。既存のスタッフと専門知識に耳を傾けたり、業界の動向や他社の実績にも注意を払う必要があります。自分たちの選択が自社のビジネスにとってだけでなく、顧客にとっても正当であると信じる必要があるのです。 

IT業界のリーダーは、今、前例のない課題に直面しています。プラットフォーム技術の選択肢があまりにも頻繁に変化するため、「メニュー」 や「材料」に精通しているだけでは、最適な選択ができないことが多いのです。

通常の情報チャネル(セールス、マーケティング、口コミ、影響力のある技術者、概念実証、ホワイト・ペーパー)と意思決定へのインプット(クラウドセンター、テクノロジエバンジェリスト、調達ターゲット)は、しばしば長期的なコミットメントへとつながり、その後の適応に苦労します。また、特定の要件を満たすだけの選択をしてしまう危険性もあります。さらに、クラウド進化のスピードで、1年後に、より良いオプションが明らかになった時、選択したものを正当化するのが難しくなることもあります。1年後には、非常に厳しい状況に陥っているかもしれません。 

より良いクラウド選択をするにはどうすればよいか

企業のクラウド利用を少しでも成功させているお客様は、上記のことを理解しています。テクノロジープラットフォームのインスピレーションリーダーは、IT要件管理、および意思決定と監視プロセスをサポートする運用に深い変化をもたらしています。これにより、ビジネスに適したITの選択を迅速に行うことができるだけでなく、継続的に選択を行い、従来のビジネスを変化させることができるようになりました。そのような企業ではいくつかの一貫した見解があります。

  1. レガシーITの運用を維持するだけでなく、既存のコアビジネスサービスを積極的に最適化し、ビジネスパフォーマンスを維持しています。これを行うことで、影響力を拡大し、キャッシュフローをクラウド運用に投資して、進化させることができます。これは難しいことです。古いものに新しいエネルギーを費やす必要があり、多くの場合、困難なレガシーITの選択を伴うからです。
  2. ビジネスを変革する企業は社内外の顧客基盤と強固な関係を築いており、アプリケーションやデータ・プラットフォームに対する消費者グループの優先順位を明確にしています。これは難しいことかもしれません。なぜなら、市場の要求は、テクノロジー、IT運用、ITの既存の変化という現実と完全にかけ離れていることが多いからです。また、多くの場合、これは非常に 「非IT的な議論」 です。
  3. これらの要求を、機能的なものだけでなく、優先順位が下がってしまうことの多い、経験的な非機能要件またはサービス要件にマッピングします。そして、なんらかの形でプラットフォームサービスのレビュープロセスを通じてこれらを継続的に再検証します。この最新の非機能要件のスーパーセットは、明示的または暗黙的な優先順位を継承しなければなりません。というのも、次の段階では、納期の優先順位の決定と、場合によってはステークホルダーに妥協してもらうことがが必要になるからです。
  4. 今後3~6ヶ月間のプラットフォームの利用者、予算、役員の優先順位に基づいて意思決定を行います。多くの企業のIT運用リーダーにとって、これは非常に短期的なものに聞こえるかもしれませんが、このサイクルで運用するための効率的なガバナンスを持つことは基本的なことです。そして、コスト削減、コンプライアンス/承認、セキュリティ、導入期間など、どの時点においても重きをおかれている優先事項を決定します。そして、これらの優先順位はすぐに変更されることがあります。多くの企業が異なる時期に異なるプラットフォームの運用を必要とする理由は、この優先順位によるものです。必要なものが分かっていたとしても、それがその四半期や半期の間で他の人と同じであることはほとんどありません。
  5. 決断したことをすぐに利益実現のための計画にし、リーダーシップやスタッフにある程度の変化や失敗を覚悟させ、利益実現の進捗を測定する準備をします。KPIを猟犬のように(毎日または毎週)追跡し、1~2ヶ月後にまた大きな決断を下せるようにします。そして、それを延々と繰り返します。

多様なエンタープライズ・プラットフォーム管理のために、上記のことを実際に行っているの企業はごくわずかです。ほとんどのプラットフォームの選択は、良くも悪くも何年も続けられており、一日中、既存のIT環境を運用している場合は非常に大変です。そのため、まずクラウドのために適切な時間、労力、キャッシュフローを設計する必要があります。かなり明確に定義されたクラウド移行プログラムでも、社内の専門家やリーダーがそれらをコントロールする時間がないという理由だけで止まってしまいます。言うは易し行うは難しですが、クラウドガバナンスをリードする時間を先に作った人たちは、真のクラウドプラットフォームリーダーになるための第一歩を踏み出していると言えるでしょう。私たちは、経験や知識を活用し、チームやシステムを常に再評価し、再編成するエネルギーを持っている企業を非常に尊敬しています。彼らはテクノロジーについて触れることなく、クラウド基盤の運用に多くの時間を費やしているのです。

ここでは、AWSやAzure、GCP、Kubernetes、VMwareなどについては言及していません。しかし、それにもかかわらず、私たちは皆、IT業界で働いており、「解決」すること、つまりテクノロジーサービスのオプションを提案したり、購入、販売、再構成したりすることに焦りを感じています。上記の作業を行った後に扉を開ければ、そこから続く会話は、貢献者とエネルギーが十分にあり、ビジネスにとって適切なタイミングで物質的な利益に貢献するための新たなガイダンスになるでしょう。

これまで見てきたように、技術やサービスの選択に先立って上記の1-5に時間を投資することで、顧客はクラウドサービスをうまく選択することができます。技術アーキテクチャやエンジニアリング、製品比較の泥沼にはまり込む前に、新しいクラウドガバナンスの基礎が確立されます。ハイパースケール製品や仮想化レイヤ、あるいはオーケストレーションされたコンテナ型メッシュの話から始まったときよりも、より迅速に、より定期的に、ビジネスや顧客に対する説明責任を果たしながら、適切な選択ができるようになります。クラウドの運用は非常に迅速に変化するため、変化に反応して対応することができ、選択を永続的な実例にするためには、高レベルのエネルギーに支えられた洞察力、コンセンサス、チームワークが必要です。これらが一つでも欠けてしまうと、一番声の大きい人や争いの少ない人の意見に賛同する時間が長くなってしまう危険性があります。

上記を達成することは困難です。しかし、クラウドプラットフォームの真のリーダーになるための実証済みのアプローチを信じて実践すれば、数カ月以内に実現できる可能性があります。私たちの経験によると、現在のクラウドサービスセクターでは、これはハイパースケールなパブリッククラウドのフットプリントの大きさやエンジニアの数、DevOpsプロセスの自動化の程度とはあまり関係がありません。

Rackspace Technologyは、クラウドの運用サービスモデルやプラットフォームサービスカタログの強化を支援しています。また、特定のアプリケーションやクラウドサービスを提供する前に、意思決定基準の強化や事前の支援も行っています。この初期段階では、お客様とRackspace Technologyの両方の成功が相互に連携しています。お客様がうまく選択できなければ、クラウドサービスプロバイダーとしても成功しません。この種の仕事上のパートナーシップでは、単にクラウドに‘無関心’であることは受動的すぎると言えます。私たちは、お客様のビジネスにとってベストなときに、方向転換できるように支援し、お客様が必要な時に、選択をサポートするビジネスとサービスを構築してきました。
当社は、お客様が毎月大きな選択を行うのを支援します。まず、お客様を担当するサクセスマネージャがサポートします。まず、お客様を担当するサクセスマネージャがサポートします。ぜひ、お問い合わせください。

本記事の翻訳編集は、アイレット株式会社Rackspace事業部ビルドエンジニアの知念梨果が担当いたしました。