プロジェクトは何のためにあるのか
―ポートフォリオ・プログラムとの関係性―
2023年10月16日- By Hiromasa Chigusa
はじめに
皆さんこんにちは。今日もたくさんのプロジェクトが走っていますね。
私はTechnical Onboarding Managerというロールで、クラウドインフラ導入時におけるプロジェクト・マネジメントを担当しています。
プロジェクトの数だけ笑いと涙があり、現場ではさまざまな苦労があるわけですが、この記事では改めて「プロジェクトは何のためにあるのか」について考えてみたいと思います。
プロジェクトの存在意義を考えると、上位概念の「プログラム」「ポートフォリオ」に行き当たります。これらの概念が成す階層構造から、プロジェクトの存在意義を少し深掘りしていきたいと思います。
「プロジェクト」とは何か
「プロジェクト」の定義としては、PMBOK®ガイドに次の記載があります。
『独自のプロダクト、サービス、所産を創造するために実施する有期性のある業務』(参考資料 [1])
「新しい何かを生み出すことを目的とした期限付きの活動」と言えるでしょうか。何らかの有形無形の成果物を持ち、明確な開始と終了が存在することがプロジェクトの性質です。
では、プロジェクトはなぜ発生するのでしょうか。こちらもPMBOK®ガイドには『プロジェクトを立ち上げる背景』としての4つの分類があります。
- 規制、法的、または社会的な要求事項を満たす。
- ステークホルダーの要求またはニーズを満たす。
- ビジネス戦略や技術的戦略を実行または変更する。
- プロダクト、プロセス、またはサービスを生成、改善、修正する。(参考資料[2])
上記のいずれか(またはその組み合わせ)は、組織の継続的な業務やビジネス戦略に影響を及ぼします。組織業務やビジネス戦略への影響に対処し、その上でさらに事業価値を実現する手段として、プロジェクトは発生するのだと言えるでしょう。
複数の「プロジェクト」が構成する「プログラム」
時には、単一のプロジェクトだけではなく、関連する複数のプロジェクトの成果を組み合わせることで、大きなベネフィットが得られることがあります。
この時、関連するプロジェクトをセットとして扱う一つの単位を「プログラム」と呼びます。
ここでもプログラムの定義をPMBOK®ガイドから見てみましょう。
『プロジェクトの個別的なマネジメントでは得ることのできないベネフィットを得るために、調和の取れた方法でマネジメントされるプロジェクト、サブプログラム、およびプログラム活動のグループ』(参考資料[4])
企業に大きな課題があり、それを単一のプロジェクトで扱うには適さない場合に、その課題をテーマ持った複数のプロジェクトの集合体として捉え、「プログラム」として管理することが効果的となるケースがあります。
プログラムはプロジェクト(または子プログラム)の集合体ですが、単なる寄せ集めではなく、「個別では得られないベネフィットを得るために」「調和の取れた方法で」遂行することが重要です。構成要素の相互依存関係に焦点を当て、最適な手法でマネジメントしていくことになります。
より上位の概念「ポートフォリオ」
「プログラム」の上位概念として「ポートフォリオ」があります。PMBOK® ガイドにおけるその定義は
『戦略目標を達成するためにグループとしてマネジメントされたプロジェクト、プログラム、サブポートフォリオ、および定常業務が収集されたもの』(参考資料[4])
その視点は「事業戦略あるいは会社としての投資対効果」であり、事業目標を達成する上でどういった活動を行なっていくのかを、組織の活動群としてマネジメントしていくものになります。
「ポートフォリオ」を単純に「プログラム」「プロジェクト」の集合体と考えると誤解が生じます。これら3つの概念には、マネジメントの観点から次の違いがあるとされるためです。
『・プログラムマネジメントおよびプロジェクトマネジメントでは、プログラムとプロジェクトを「正しい」方法で行うことを重視する。
・ポートフォリオマネジメントでは、「正しい」プログラムと「正しい」プロジェクトを行うことを重視する。』(参考資料[3])
プログラムやプロジェクトは目標達成のために活動推進の「手法」が重視されているのに対し、ポートフォリオは「選択」あるいは「優先順位づけ」が重視されていることがわかります。
ポートフォリオ・マネージャーが『内外の環境全般に起こる変化を継続的に監視する』(参考資料[4]) とされているように、その構成要素は内外の環境変化をインプットとして、より高い価値を提供するために慎重に検討される必要があるのです。
まとめ
「ポートフォリオ」と「プログラム」「プロジェクト」は互いに関連性を持っており、プロジェクトの存在意義とは、企業が各々持っているポートフォリオの価値を最大化することになります。(これが冒頭でテーマにした「プロジェクトは何のためにあるのか?」に対する一つの回答になると思います。)
ポートフォリオとの関係性が見えにくい、もしくは関係性が希薄なプロジェクトは、その存在意義が実はあまり大きくないということにもなりかねません。
一方で、ポートフォリオは外部要因を受けて変化し得るものです。外部要因によって変化し得るポートフォリオの観点から、既存あるいはこれから予定されているプロジェクトの戦略上の意義を、トップダウンで継続的に見直すことも重要でしょう。
プロジェクトを推進する際は、企業の今あるポートフォリオやプログラムとの位置付けを意識しながら実行していきたいものです。
参考資料
[1] PMBOK®ガイド 第6版 p.4
[2] PMBOK®ガイド 第6版 p.7
[3] PMBOK®ガイド 第6版 p.12
[4] PMBOK®ガイド 第6版 p.13
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